心理学における「抑圧(repression)」は、無意識の心的メカニズムの一つを指します。抑圧は、個人が不快な思考や感情、欲望を無意識のレベルで抑え込むことを意味します。この過程により、抑圧された情報や経験は意識から排除され、意識には入り込まないようになります。
抑圧は、通常は対象となる情報や経験に対して不快さや脅威を感じた際に起こります。個人は自己防衛の一環として、そのような情報や経験を意識から遠ざけることで、心の安定を保とうとします。
しかし、抑圧は完全な無意識の過程ではなく、抑圧された情報は潜在的なレベルで依然として影響を及ぼすことがあります。抑圧された思考や感情は、夢やフリージング、スリップ・オブ・タング、反応形成などの形で表面化することがあります。また、抑圧された内容が後の人格形成や心理的問題に影響を与えることもあります。
抑圧はフロイトの精神分析理論において重要な概念とされており、無意識の過程として研究されてきました。ただし、近年の心理学の研究では、抑圧が必ずしも有効な防衛機制であるとは限らないことが示唆されています。他の防衛機制や処理方法も個人の心理的適応において重要な役割を果たすことが分かってきています。